NPO博多まちづくりが社会実験を行うのは2回目である。平成15年に「博多社会実
験」を行い、そして今回平成17年の「美野島社会実験」である。
1回目は散々であった。はっきり言って、関係者の中で、この社会実験の社会的意
義・まちづくりの視点を言うのはNPO博多まちづくりだけであった。協働とは言うが、博
多部四地域であろうと関係する各行政であろうとバラバラであった。NPO博多まちづく
りだけが孤軍奮闘し、リスクを負い、そして地域からも行政からも結果を問われ、黙っ
て聞いた。「くそ食らえ」と言って何もかも吐き散らかし、清々してまちづくりを終わりに
はできなかった。それは、これまで20年間のまちづくり活動を、同志や自らの覚悟を
否定することになるからだ。20年前と同じで、日本的民主主義社会でまちづくりを行う
のは、まだ悶々としながらしかできないのだから。残念ながら日本のまちづくりやまち
づくり型NPOの活動実態は、未だ自らが活動できる環境づくりなのだから。まさに美野
島社会実験のキャッチフレーズ、「辛抱してこそ道開く」である。
だが、2回目は地域も行政も違っていた。美野島には、地域の将来を想いそれを実
現しようとする自治力と実践力があり、人(リーダー)に恵まれた。行政も、地域や
NPOの想いを受け止め、主体的に行動する人(現場の担当者)に恵まれた。
また、1回目と2回目の大きな違いのもう一つは、実験費用の負担である。1回目は
国土交通省が全額負担したが、今回は国土交通省・都市再生機構九州支社・福岡
県中小企業団体中央会・福岡市・九州大学(研究費から)が応分の負担をしていただ
いた。まちづくりが道路だけでできるわけは無く、また協働まちづくりということから言
えば当然のことではあるが、今回、横割りによる「協働まちづくり体制」が実現できた
と言える。表には出ない大きな成果である。
しかし国(政府)は、もっと社会実験を推進できるだけの予算をつけるべきである。言
うまでもなく、国が豊かになるには地方・地域が豊かにならなければ実現できない。
海を埋め立て、山を切り開き、都市や地方にあったコミュニティを崩壊し続けることへ
の反省があるなら、本気で市街地の空洞化を止めようとするなら、横割り的に大幅な
予算増額をすべきである。現時点で、社会実験は地方・地域に住む人々を元気にし、
真に豊かな国づくりに効果を期待できる唯一の施策なのだから。
最後になったが、協働まちづくりで現場にまみれた美野島地区と関係行政とNPOボ
ランティアスタッフの方々に心からの敬意と感謝を申し上げたい。
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