こうした状況の中で人口が減り、同時に地区がもともと持っていたサービス機能
がどんどん低下していくのである。コミュニティの中で成熟していた店舗などが、
人口の減少とともに経営が難しくなりつぶれていくことによってサービス機能が
著しく低下していく。そして、それがさらに人口減少に拍車をかける。人口減少、
サービス機能の低下が連鎖反応的に起こっているのである。
次に大浜小学校に通っている家族がどこに住んでいるかを調べてみた。中高
層の共同住宅に子どもを持つ家族が多く住んでいる。人口減少の中で最も懸念
されるのが、健全ファミリーの流出である。健全ファミリーを強調するのは、子ど
もがちゃんと育っているかどうかを示してくれるからである。子どもたちは外で遊
ぶ空間がほとんどない、公園もないし、遊ぶ友達もない、こんな状況で健全ファ
ミリーが住み続けられるかである。こんな子どもをもつ健全なファミリーが都市の
中に住むことを考えると、大浜地区では住宅更新をやったところには、健全ファミ
リーが住んでいるのが一目瞭然で理解できる。したがって、将来のビジョンを考
えたとき、ファミリーが住める住宅づくりをちゃんとやっていくならば都心の人口回
復もその可能性が高くなるのではないかと考えられる。
○都市における住宅づくりの試み
では、どうすれば都市の中に住宅をつくることができるのかということについ
て、近年アメリカで行われている取り組みを紹介したい。現在、いずれの都市で
も都市に住宅をつくることが非常に難しくなってきている。市場論理の中で住宅
をつくれば、高額な家賃あるいは分譲価格になり、庶民は住めたものではない。
端的な例を挙げると福岡市役所の職員の大部分の方々は福岡市に住めない
し、実際住んでいらっしゃらない。市役所の職員が住めないということだから、福
岡市というのは金持ちしか住めない街になっている。
こうした中で最近注目されている住宅のつくり方がある。アメリカで行われてい
る、コミュニティ開発法人の組織による住宅づくりである。アメリカでコミュニティ
開発法人はすでに1960年代にスタートしている。コミュニティ開発法人が供給し
た住宅は、1980年代においては全米で年間に3,000から5,000戸であるが、
1991年度の調査では年間30,000戸とかなりの量を供給している。日本の住宅
都市整備公団の住宅の供給量が年に1万戸程度であるので、住宅都市整備公
団の3倍の量を供給していることになる。なお、コミュニティ開発法人は1991年
時点で全米で32万戸の住宅を管理している。 → |
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コミュニティ開発法人の事業で注目すべきは、住宅の供給のみにとどまらず、
コミュニティをつくっていくことを目標としている点にある。住宅をつくって終わりと
いうのが普通行われているハウジングである。しかし、本来は住宅をつくること
は、同時に住宅地を、生活を、街をつくるということである。そこで商売が生ま
れ、働く人が増え、そして全体としての地域社会が生まれるということである。
調べてみるとコミュニティ開発法人は、32万戸の住宅を作ると同時に9万人の
雇用を実現している。したがって、コミュニティ開発法人の事業の中身は、住宅
をつくることはもちろん、雇用機会の創出、職業訓練、さらに、地域社会の福祉
サービスも行っているのである。
さて、こうした活動を行うには資金が必要となる。資金を得るためには、行政か
らの援助はまず必要となるが、同時に銀行や企業から融資をあるいは資金提
供を受けるのかということが大きな鍵となる。そこでインターミディアリーと呼ば
れている仲介組織が重要な役割を果たす。銀行がとにかく融資、投資をすると
きに、コミュニティハウジングをつくる法人組織がきちんとした組織であるかどう
かという判断をインターミディアリーが行い、最終的にコミュニティ開発法人組織
に投資される。
ところで、なぜ銀行が非営利団体であるコミュニティ開発法人に投資をしてい
るのかというと、ローカルな銀行がローカルな範囲に地域貢献を義務化する法
律に基づいている。即ち、1977年に制定されたコミュニティ再投資法で自らが
立地するコミュニティに対して銀行が一定額以上の投資を行わなければならな
いという法律である。さらに、コミュニティ開発法人が資金提供を受ける仕組み
は徐々に強化され、1978年にNRC(近隣地域再投資法人)、1986年にコミュ
ニティ開発法人に投資を行った機関に対する税制控除が定められている。こうし
た法制度の整備が大きな武器になり、インターミディアリーが資金を集め、非営
利の団体に対して投資、資金提供をするという構図が、コミュニティ開発法人の
組織なのである。
また、アメリカでは1990年にアフォーダブル住宅法を制定し、コミュニティ開
発法人が供給する住宅は中堅所得者層が住めるような住宅でなければならな
いという目標を定めた。このアフォーダブルとは即ち手に届く住宅ということで、
中堅所得者層が住める住宅を供給するということである。
以上の様にアメリカでは、一定の法制度の整備を行いながら、自主的に住宅
をつくろうする組織を育成し、その組織を地元の銀行が融資対象として ↓ |